MINOTAUR × muraco Talk Session
心身共に快適なテクニカルプロダクトウェアを制作するMINOTAUR INST.とアウトドアブランドのmuraco、異なる事業領域の中であっても、それぞれの強みを持ち寄りながらコラボレーションプロダクトを生み出しています。これまでタープポンチョを始め、MINOTAUR INST.のSHOPで使用しているハンガーラックなどを開発してきました。
2023シーズンから展開予定の「muraco × MINOTAUR INST. Apparel」は新たな協業のフェーズを表現するでしょう。
今回のJournalでは、muraco代表村上卓也が、MINOTAUR INST.ディレクターの泉栄一にブランドづくりについての考え方を聞いた。
Profile
村上卓也 株式会社シンワ代表取締役社長 / muracoディレクター インテリアショップや広告代理店でのキャリアを経て、二代目として引き継いだ金属加工会社の新規事業としてアウトドアブランドmuracoを立ち上げる。アウトドア業界の既成概念にとらわれない自由な発想と、金属加工業のクラフトマンシップを武器に、自ら製品の企画、デザイン、設計を手がけ、業界に新たな風を送り込む。 |
「企画、生産、販売など全て根っこの部分からものづくりをしていると聞いて、自分たちと近い物を感じました」
泉:最初はmuracoのことは知らなかったんですが、共通の知り合いの横山くんが、合いそうだからと繋いでくれたのがきっかけでしたね。
村上:そうでしたね。私もMINOTAURの事は知らなかったんですが、泉さんがオーナー兼デザイナーで企画、生産、販売など全て根っこの部分からものづくりをしていると聞いて、自分たちと近い物を感じました。アパレル業界に泉さんのような方がいるとは想像していませんでした。
泉:私は当時中目黒に住んでいて、MINOTAURの中目黒店の中で企画・生産・卸と全てやってました。店頭にも立っていましたし、打ち合わせもお店でやっていました。一方で地域に根ざした事をやろうともしていましたし。そういう意味ではとてもmuracoとはムードが近かったですよね。
村上:業界は違うけど仕事の仕方も近かったですし、それを泉さんと話していても感じられましたね。
泉:村上さんのテントには、見えないところにまで「こうしたい」という強いこだわりが感じられます。きっと日常生活でもこだわりがあるんじゃないでしょうか。私も普段から見えないところにこだわりたいんですよね。
例えば家にいる時もお洒落したいですし、表層的でありたくないというか。私が子供の時に「花柄の布団を使わせないでくれ」と親に言っていたんですよ。シンプルなのがいいと。子供の時から理由なきこだわりがあって。親からは羽毛布団があるだけでも恵まれてるのに何言ってんだとは言われましたけどね。笑
muracoも業界は違うけど、見えないところから見えるところまでを一貫して形にしていこうとしている印象です。
▲muracoの代表的なテントプロダクト
「実は『MINOTAUR』というブランド名の由来は、ピカソやダリなどが携わったシュールレアリズムの本の名前なんです」
村上:改めてMINOTAUR INST.のコンセプトを教えてください。
泉:「心身ともに快適」がコンセプトです。
「心」は、世の中の時代性とマッチしているか、どう言う考え方で着ているのか、という部分です。
「身」は軽いとか丈夫とか、身体の快適という部分です。装うということは、どちらも快適でないといけないと考えています。
実は「MINOTAUR」というブランド名の由来は、シュルレアリスムで知られるピカソやダリなどが携わった「MINOTAURE」という前衛美術誌の名前なんです。そこでは美術に限らず様々な芸術や学問について掲載していました。なのでMINOTAUR INST.も、色んな業種とセッションするためのプロジェクトとして始めたんです。昔はカルチャーと洋服を一緒にするなと否定されてきましたが、でもそれを100年近く前にピカソたちはやっていたわけで、その証明として「MINOTAUR」というブランド名にしました。
自分のベースになってるのが、10代の頃に好きだったスケートボードや音楽、クラブカルチャー、洋服です。80年代に「Stüssy Tribe」と言うカルチャーが海外で生まれました。世界中で同じ考え方を持つ信頼関係のある人たちが、みんな同じロゴの服を着ていて、それがかっこよかったんです。
人と被る事が嫌で個性を出してきた人達が、共通項を一つのロゴで表す、という事に影響をうけたんですね。ブランドの信者になるとかではなくて、「コミュニティーをつくる」という考え方が自分の価値観にあうと思いましたね。1人だけがいい物を知っていても誰にも伝わらないから、皆で意識を向上させる。雑誌とかメディアではなく、実体験とか人と出会った時に感じる力とか、ファッションを通じて築きあう関係をつくっていく事を私も意識していました。
村上:僕も、とにかく黒がいいからとかではなくて、ブランドの生産背景や作り手の思いも含めて、自分のニーズにあった物を見つけて使う喜びをユーザーには感じてほしい。そういったところは、MINOTAUR INST.の世界観と同じような感覚でユーザーに選んで欲しいと思いますね。
泉さんと会うまではその辺りはそこまで執着していなかったんですよ。商品数増やすためにあれもこれもやろうと考えていた時期があって。でも泉さんと出会って、適当な事やっていたらダメなんだなと。muracoの方向性を変えていけたのは泉さんとの出会いがあったからで、仮にアウトドア業界にだけどっぷりと浸かっていたら、今のブランド感にはなっていなかったと思いますね。一緒にお仕事させていただけて本当によかったです。
泉:私は音楽に携わっていたので横の繋がりが多かったんですが、洋服だけのカテゴリー内にいると縦社会を感じました。でも違う業種だとフレッシュな関係性ができたり、新しい価値観を取り入れていけますよね。私もファッションをベースにして業種を超えた価値観を取り入れていっているから、MINOTAUR INST.ができていっているんだろうなと思いますね。
▲埼玉県狭山市のmuraco工場風景
「場所、時間、人種、世代切りとかではなくて、『意識のコミュニティー』を繋げるためにファッションを使っているので、それをより豊かな物にしていきたいんですよね」
村上:時代の変遷に合わせたこれからのMINOTAUR象はどうなっていきますか?
泉:僕のブランドを例えるとしたら、クラブミュージックみたいな物なんですよね。
例えば日本の歌謡曲は近所の人は知っていても、世界中の人はあまり知らないですよね。でもクラブミュージックは、近所の人はあまり知らないけど海外の人は多く知っていて、海外に行くとあの曲はいいよねとかなるんですよ。実はローカルでアンダーグラウンドの方がグローバルだったりするんですよね。MINOTAURを日本で知っている人は少ないと思うんですけど、海外に行って近い価値観の人に会うと知ってくれています。僕が今パリにいるのは、情報だけではない自分の感覚で出会い、感じて、表現し、伝えたいことにフラットでいることも、一つの理由です。
私にとって村上さんとの関係ってなんか親戚みたいな感じがするんです。親戚の旦那さんみたいな感じ笑 血も繋がっていないし、職業でも繋がっていないけど、繋がっているような感じがある。国籍や住む場所が違う人でも、考え方が近いと繋がっているような感覚がありますよね。場所、時間、人種、世代とかではなくて、「意識のコミュニティー」を繋げるためにファッションを使っているので、それをより豊かな物にしていきたいんですよね。
「ブランドをやる上での人との繋がりは、昔からフレンドシップがベースなんでしょうね」
村上:泉さんにとっては店舗ってどういう場所ですか?
泉:私も物を作りながら店頭に立っていましたけど、店舗って赤の他人と出会ったり、将来に繋がる大事なコミュニケーションの場所でしたね。看板も出してない店舗でしたし、何かしら意思を持って入ってきてくれる方が多かったです。物は買わないけど、興味を持ってお店にきてくれている人たちと色々と討論をしていたんです。そういう人たちが20年30年と経って大人になった今、何かやれたらいいねみたいなのが色々起きているんでしょうね。
村上:なるほど。お店があったから人が無作為にきて、そこが出会いの場になって、それが今はブランドの資産になって成長していったということですかね。
泉:そうですね。お店での交流から仕事になっていったり、コラボレーションが生まれることも多いですね。
村上:なんとなく「この人違うな」みたいなのは泉さんの感覚にあって、「この人面白いな」って人だけと繋がって残っていったと。
泉:私がブランドをやる上での人との繋がりは、昔からフレンドシップがベースなんでしょうね。
村上:ビジネスっぽくないところでビジネスになっているのが泉さんらしいですね。そこが泉さんの魅力っていうか。
▲MINOTAUR INST.のSHOP什器としてmuracoが製造したハンガーラック
▲ポンチョとタープの2WAYトランスフォームプロダクト
MURACO x MINOTAUR PONCHO TARP